オレンジ

さわやかな夏の香りの果実。夏に全盛
入手方法 シャムロックの果物屋にて購入

 
「ベッドで寝ないと、風邪をひきますよ、オーキッド」
「あ、ヒース、戻ったのか」
 眠い目をこすりながら、オーキッドは振り返る。
「夜だけは戻れというのが、ジニア様のご命令なので」
「でも、おまえがいなくたって、ジニアはたいがいなんでもできるぞ」
 ふいに部屋が寒くなった心地がした。
「ごめんごめん、怒るなよ、ヒース」
 カモミールと入れ替わりにやってきた同室者は時々、とても寒い空気をかもしだす。
 ジニアに関することになると、すぐだ。
「いいえ、私の方こそ失礼しました」
 そのことは自覚があるみたいで、すぐに元に戻るのだけれど。
「うーん」
 重くなった空気を跳ね返すかのように、オーキッドは伸びをする。
「それにしても、どうして部屋で勉強すると眠くなるのかなー。ジニアの部屋ならこんなことないのに」
「それは、しかたないだろう。このオレンジの香りの中じゃ」
「へ?」
「聖乙女さまがたのプレゼントなのだろうけど、お前のまわりはオレンジが多すぎると思うぞ。オレンジの香りには緊張を解きほぐすというだろう。寝室には最適だが、勉強部屋には不向きだな」
「そうだったのか、ちーっとも知らなかったぞ」
 オーキッドは太陽の色の聖乙女からのプレゼントをしげしげと眺めた。
「あ、でもヒースは夜眠りにしか来ないからいいけど、カモミールには迷惑だったかな」
 ほんのわずかな間同室だった、病弱な少年を思い浮かべ、オーキッドはため息をついた。
「そんなことはあるまい。身体を温めるし、風邪予防にもなるって話だ」
 寝台に潜り込みながら、ヒースが眠そうに答えた。
「物知りだな、ヒース。ありがとな」
 返事はなかった。オレンジのおかげか、もう眠り込んでしまったらしい。
「ま、いっか、勉強はジニアに教わりながらやればいいしな」
 オーキッドはつぶやき、自分も寝台に潜り込んだ。ふんわりとオレンジの香りが彼を包み込むのを感じた。
「聖乙女さま、すっげうれしいぞ」