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「お薬の時間です、カモミール様」
不意の声に驚く。
「ああ、ノビルか、びっくりした」
読みかけの本にしおりを挟み、閉じた。
「集中なさってましたね。根を詰めすぎないように…。せっかく、学校に通えるようになったのですから」
「ああ、そうだね。また倒れたら、もう二度と、僕にあの門は開かれないんだから」
薬湯で手を温めながら、ゆっくりと飲み干す。
慣れた苦み。
幼いころはつらかったが、これで健康が取り戻されると思うと、今では好ましくすらある。
それに…。
カモミールは机の引き出しをひき、小箱を取り出した。
「ずいぶんかわいらしい箱ですね。くまくま屋のものですか?」
「うん、エルダーの父上がね、届けてくださったんだ。この間ノビルに届けてもらった、薬湯のお礼にね」
「ああ、それはようございました」
重厚な、ルパーブ公爵家の書斎では、ちょっぴり浮いてはいるけれど、カモミールはこの箱が好きだった。
ルパーブ公爵ではない、ただの学生カモミールに贈られたものだから。
「大切なものを、入れるのにちょうどいいしね」
「ああ、聖乙女さまからの贈り物ですね」
ダイナスティアでは貴重な、白い砂糖を材料にできる、星形のキャンディ。
舌の上を転がすと、苦みに縮こまっていた舌がほぐれてくる。
なんとなく、元気がわいてくる。
「ありがとう、聖乙女さま。あなたは心の聡い方ですね。大切に味あわせて、いただきます」
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